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2021年9月21日火曜日

【日本の淡水魚図鑑】

(著者:田口 哲/ 監修:井田 齊 / 出版:誠文堂新光社)

私の集大成として「淡水魚識別図鑑」(誠文堂新光社)を出版したのは2014年のことです。しかし、その後も淡水魚の取材は継続して進めており、今回、その素材に加え、新たに撮影・執筆と編集をしたのが本書です。

淡水魚でも特にサケ・マスの仲間か好きで、さまざまな姿を写真に収めることを目標にしてきました。私が最初にクニマスの写真を発表したのは、1988年刊行の「日本の淡水魚」(山と渓谷社)と、翌年刊行のフィールドカイド「日本の魚・淡水編」(小学館)です。それから32年も経ってしまいましたが、当時、クニマスの写真を世界で初めて撮影できたことは今でも大変嬉しく思うと同時に、モチベーションとなっています。

2016年8月7日日曜日

鞭状に曲がるくちばし・オオソリハシシギ

学名:Limosa lapponica
英名:Bar-tailed Godwit


石川県の海岸の砂浜には、広範囲に甲殻類が潜んでいる場所があるので、毎年、渡りの季節にはシギやチドリの仲間が立ち寄る。以前、ミユビシギ、ハマシギ、ミヤコドリ等を撮影して紹介した砂浜だ。今回のビデオでは、オオソリハシシギに遭遇した機会に、その餌探しの様子などを観察しながら、じっくりと撮影した。

砂の上の小さな穴を見つけてくちばしを差し込み、器用にカニや貝類を探し出してついばむのは想定内だったが、偶然に大発見があった。ビデオの終了間際のカットがそれだが、上のくちばしを鞭の様に曲げている。鳥のくちばしは多少曲げられるだろうことは知っていたが、基本的には長いピンセットと同じ機能だと思っていたので、その曲がり具合には正直びっくりした。

繁殖期・にぎやかなウミネコの島

学名:Larus crasserostris
英名:Black-tailed Gull

ウミネコはほぼ一年中見られるカモメの仲間だ。くちばしが黄色く、先端部には黒と赤の斑点があるので、他のカモメと区別出来る。繁殖期になると、外敵の来ない岩礁や無人島に集まって来て、コロニーを作る。それでも上空から雛を襲って急降下して来る猛禽類(トビが多い)もいるので、「ミャーオ クワーオ」と鳴きながら、団体さんで守る。

今回は雛がかなり成長してもう巣立ちが近い状態だったので、猛禽類の襲来も少なくなっていた。この島は越前海岸にあるが、付近の水面には小魚も多く、直ぐ近くの浜には水質の良い川も流れ込んでいるので、群れで水浴びをしていることもある。つまり、ウミネコにとっては、サンクチュアリー的な島である。

ウミネコに関しては以前You-tubeで、交尾行動も紹介しているので、ご参照下さい。

圧巻・柏島のキンギョハナダイ

学名:Pseudanthias sqamipinnis
英名:Threadfin red bass

長年にわたり、国内のみならず、海外のダイビングスポットも数多く潜って来た。キンギョハナダイが驚異的な数で群れている場所は何処にでもありそうだが、意外と多くはない。 思い起こしても、紅海の某所と西伊豆の某所他数ヶ所だが、 久しぶりに柏島のサンゴ礁でこの場面に出会った。普段は余り気にもとめない普通種なのだが、大群でいると、海の中が明るくなった感じで、つい見いってしまう。

これだけの数が定着するためには、通年潮通しが良く、プラクトン等が豊富であると言う条件を満たしているのだろう。又、浅場は波の影響を受けるので、水族館が、海水魚を捕獲する為のトラップ等を設置出来ない場所だからだと思う。

取材協力 SEA ZOO

2016年6月29日水曜日

九頭竜川・中流域のサクラマスとニゴイ

サクラマス
学名:Oncorhynchus masou masou
英名:Masu trout

ニゴイ
学名:Hemibarbus barbus
英名:Steed barbell

河口から河川に侵入したサクラマスは約4ケ月かけて、上流の産卵場所を目指す。上流の渓流域に入ると透明度の関係で、その姿を水中で見られる機会も増えるが、中流〜下流域では、よほど透明度の良い河川でなければ、その姿を水中で観察する機会はない。梅雨に入る前の水量の少ない時期のこと。堰堤の下のタマリで川の流れよりも、伏流水の方が多い状況が生まれ、一時、透明度がかなり良くなることがある。そんな場所で遭遇したニゴイの群れの中に、数尾のサクラマスが混じっていた。海から遡上した時の銀白色の姿ではなく、うっすらと婚姻色が出始めている。ビデオに映っているのは、比較的大型の雄で、推定全長70cm。河川中央の魚道に戻って遡上を続けるには、次の雨での増水を待つしかない様だ。

大型のイザリウオが動く

学名:Antennarius commersoni
英名:Giant anglerfish

相模湾以南の西部太平洋〜インド洋、東太平洋の熱帯域、ハワイに分布する。オオモンカエルアンコウはイザリウオの仲間では比較的大型になる種類で、体長30cmに達する。斑紋や体色は変異に富む。近くにいるシラコダイ(チョウチョウウオの仲間)と比べるとその大きさが分かると思う。

岩のへこみに張り付いていると、周囲の色に紛れて、その姿形がはっきりしないがこうして動いてくれると、やっと全体像がはっきりする。この大きな体でエスカ(ハタキ状の疑似餌)を振って獲物をおびき寄せ、勢い良く飲み込む瞬間を見てみたいものだ。

取材協力:柏島 SeaZoo

アオリイカの産卵と雄の闘争

学名:Sepioteuthis lessoniana
英名:Bigfin ReefSquid

4月末頃、人工的に設置した産卵床にアオリイカが産卵に集まり始めたと言う情報を聞いて、高知県の柏島へ出かけて見た。5月の中旬が最盛期の予定と言うことだったが、もう既に数匹の群れが集まって来ていた。

雌は雄を誘う様に並んで、足の方向を産卵床に向けて接近するが、産卵を始めようとしたその時、途中で険しい目玉をした別の雄が、妨害に入り、足をからめる様にして取っ組み合いを始めた。雌の数より雄が多い場合はこんな感じになることも多いのかも知れない。イカの目玉も人間と同じ様に怒りを表現できるのが分かったのは新発見だった。

取材協力:柏島 SeaZoo