ページ

2014年12月18日木曜日

柿を食うムクドリとコムクドリの水浴

学名:Sturnus cineraceus
英名:White-cheeked Starling

ムクドリは夕方になると大群で国道○号線添いの街路樹に集まって来る。竹林や森の中で眠ればゆっくり静かに眠れると思うのだが、猛禽類の攻撃を恐れているのか、車がひっきりなしに通る大通りのネオンで明るい場所を寝ぐらにしている集団がいる。ギャー キュルキュルと鳴き声もうるさい上に糞害もあるので、近くの商店や会社ではさぞかし迷惑なことだろうと思う。

ムクドリはくちばしと足は黄色いが体色は地味であまり可愛いらしくもないので、普通はレンズを向けることはない。北海道から九州に生息する鳥だが、九州では数が少ないとのことだ。柿が熟す時期になると、群れで集まって来て、次から次へと移動しながらどんどん食べつくして行く。熟した柿の実の傍では、むさぼり食っている暗色のムクドリの体色が意外と目立ち、車を止めてつい見とれてしまう。越前では何処の家にでもと言う位、あちこちに枝もたわわに実がなった柿の木が見られるが、一部を干し柿などに利用する程度で、そのまま鳥の餌にしてしまう家も多く、野鳥にとっては食べ物に困ることのない嬉しい季節であろう。

我が家の裏庭にも大きな渋柿の木と甘柿の木が3本あるが、渋柿は半分ぐらい取ったら野鳥の餌用に残してある。1月の中旬位迄、メジロ、シメ、シジュウカラ、ヤマガラ、ウグイス、ヒヨドリ等が食べに来るので、貸切で撮影出来るから楽しい。ラストの水浴びシーンはコムクドリで、体色が白いので区別出来る。

ニッコウイワナ・仔魚、若魚、成魚

学名:Salvelinus leucomaenis pluvius
英名:Japanese Char

日野川の支流の田倉川の上流に潜って見ると、ヤマメばかりかと思っていた渓流に何とニッコウイワナも少なからず生息しているのが判った。体長10〜15センチ位の若魚も多いので、昨年の秋にふ化した個体かと思われる。イワナは地味な体色で体に虫喰い模様がある魚だが、明るい体色の若魚は黄緑色の美しい模様をしているものもいる。

おだやかな天気の日には川底の岩の上にいる水生昆虫等を活発につついて捕食している。成魚のサイズになるとかなり用心深くなるのか、大きい岩の隙間や下部に潜んでいるか、白泡の下等に隠れているので、偏向グラスを着けた釣人にも発見出来そうもないが、水中撮影もそれだけ難しくなる。

仔魚は卵からふ化した個体を数年前に水槽で撮影したものだが、もう胚嚢が小さくなっていて、間もなく砂利の間から泳ぎだす段階。このサイズではまだ虫喰い模様が出ていない。この渓流の上流には山奥に小さな池があって釣人が食べるには小さすぎるイワナを放流するとかで、いいサイズのイワナが群れているそうだ。

地図をたよりに車をすすめると、(最近は渓流釣りも以前ほどのブームではないので、訪れる人もないのか)細い山道には草木が生い茂り車も入れなくなってしまっている。又、その周辺はツキノワグマの生息地で、友人も数日前に親子のクマを見ているとか。単独での取材は危険なので、友人と来たときに再度挑戦しようと、その湖まで行くのは諦めて帰途についた。

昼間にヒル食うタカブシギ

学名:Tringa glareola
英名:Wood Sandpiper

チドリ目シギ科の野鳥。漢字名は「鷹班鷸」なので、鷹の班紋をしたシギと言うことの様だ。雌雄は同色。頭部は灰褐色で白い斑点がある。夏羽は灰黒褐色の背面に白や淡灰色の斑点がある。腹部や翼の下面は白色。冬羽は褐色味が強くなり、黒班が不明瞭になる。シギの仲間は海岸の砂浜や河口の干潟等に見られる種類が多いが、タカブシギは内陸部の水田や湖沼の干潟等淡水域で見られることの多い普通種である。

英名の由来は、繁殖地では谷地坊主(ヤチボウズ=スゲ)の茂る森の近くの湿地で営巣することから。尾を上下に振りピョツピヨツピョツと鳴きながら、餌を探して干潟を歩く姿は可憐で可愛い。体色はモノトーンだが、清楚な感じである。双眼鏡を使って観察していると、時々泥や水中から細長い物を引っ張り出して食べている。良くみるとどうやら食べているのはミミズやヒルの様で、その可憐な姿に似あわずゲテモノ食いである。

そういえば以前セイタカシギを水田で観察していた時もヒルやオタマジャクシ等を食べていたのでそのスマートで可憐な姿にメロメロだった僕にはショックだった。美しく愛らしい野鳥はキレンジャクやヒレンジャクの様に赤く熟したナナカマド等を食べる菜食主義であって欲しいのだが、現実はそんなにロマンチックではないようだ。

2014年12月2日火曜日

アトリ・群れで飛来

学名:Fringilla montifringilla
英名:Brambling

スズメ目アトリ科アトリ属の野鳥。毎年秋になるとアトリの大集団が渡って来る。その群れは餌を求めて忙しく飛び回り、田んぼや草原に舞い降りるのだが、一斉に向きを変えて飛ぶ姿は壮観である。

札幌に住んでいた頃は雪景色の中、街路樹のナナカマドの実を食べに来る姿が良く見られた。熟したナナカマドの実は真っ赤で柔らかく塊状になっているが、そこに雨覆がオレンジ色をしたアトリの雄がとまって食べているととてもカラフルで、つい立ち止まって見とれてしまう。バックが青い空ならさらに良い。以前はツグミ同様食用の野鳥としてカスミ網で捕獲されていた。ユーラシア大陸の亜寒帯針葉樹林で繁殖し、現地ではコメツガやモミ等堅い針葉樹の種子を好むらしい。日本列島では冬鳥または旅鳥で、年によって渡来数の変動が多い種類としても知られる。

群れの近くには時々ハイタカやオオタカ等の猛禽類も散見される。特に西日本では、度々数千から数万羽と言う大きな群れを作るので、アトリが少ない年は何となく寂しく感じられるほどだ。大きさはスズメと同じかちょっと大きい位なので、枯れ木にとまったアトリの群れを良く見ると時々スズメが数羽混じっていることがある。アトリは「花鶏」と書くが「あっ鳥だ!ア・トリだ」と空を見上げるからではないかと冗談を言う人もいる。英名のBramblingは「木いちご摘み」の意味とか。

カジカの捕食シーン

学名:Cottus pollux
英名:Japanese fluvial sculpin

カサゴ目カジカ科の魚。本種は海へ降らない大卵型で小型種。幼少の頃、田舎の川でカジカ捕りをして遊んだので、カジカのいる川に潜って撮影していると、何故か幸せな気分になれる。この日も透明度抜群の渓流でカジカを見つけたので、じっくり観察しながら撮影していた。

カジカは水生昆虫等を餌としているが、餌を発見すると大きな口をあけてダッシュし、砂ごと飲み込む。砂は後で噴出すのだが、砂も一緒に胃袋へ入ることも多いと思われるので、糞づまりにならないかと心配になる。しかし、イワナ等は嵐が来て川が増水すると、バラストがわりにわざと小石を飲み込んで体を重くし、岩の下等に隠れて流されない様にする習性があるらしいので、余計な心配かも知れない。

ビデオの途中からフレームインした小型のカジカは雌なのか若魚なのかは不明だが、その行動はとても可愛らしい。このカットを撮影した渓流はいくつもの大きな堰堤で仕切られているので、下流部へ降ることは出来るが、ここより上流には遡上出来ない。ボウズハゼの様に吸盤がついてないカジカは、堰堤の壁をよじ登ることは出来ないので、釣人か誰かが、運んで上流へ放流しなければ生息していないと思われるのだが、何故か上流側にもいる。カジカは漢字名で「鰍」と書く。夏をイメージする魚なのだが、何故か秋の魚なので今回は秋に撮影して見た。ちなみに「秋刀魚」はサンマのことである。

ウソの水浴び

学名:Pyrrhula pyrrhula
英名:Eurasian Bullfinch

スズメ目アトリ科ウソ属の野鳥。頭が黒く、雄は喉から頬がピンク色、嘴が太くて短く黒い小鳥で、生息数は余り多くない。ビデオは雄で、雌は茶色と黒色の配色。本州以北のやや標高の高い針葉樹林で繁殖するので、なかなかその姿を見られないが、冬季には平地の公園等にも現れることがある。

今回はそろそろ紅葉も終わりかけた海に近い森林公園の小川で水浴びをしていた。天気は良かったが、もう風が冷たい時期であるにも関わらず、シジュウカラ等他の小鳥よりは長い時間かけて水浴びをしていた。北海道では雪景色の森林公園の水辺や広い牧場の草原などで出会っているが、余り接近する機会がなかった。

今回はカメラを構えている所へ現れてくれたので、比較的近距離で撮影出来た。この小鳥は果樹園の新芽や公園の桜、梅、桃等のツボミを食べてしまう害鳥とされ、駆除の対象になっていたこともある。繁殖期には昆虫も食べるが、秋には、ズミ、ナナカマド、ハイマツ等の実を食べる。ウソとは本当か嘘かのウソではなく、語源は「嘘ぶく」の古語。又「口笛」の事を「オソ」とも言うのが和名の由来との説もある。「ピーヒュー」と悲しい口笛の様に囀りながら、脚踏みする様な動作をすることから古来「弾琴鳥」の別名もある。亜種のアカウソはもっと腹部の方まで赤いので、区別出来る。

2014年11月7日金曜日

そば畑のノビタキ

学名:Saxicola torquata
英名:Stonechat

毎年、秋になると蕎麦畑には一面、白い花が咲き乱れる。花には蝶を始め、様々な昆虫が集まってくるが、これを目当てにノビタキもやって来る。ビデオは蕎麦の実が目立つ様になる頃撮影した。

ノビタキは以前北海道の石狩平野等で、営巣と子育ての様子をリモコンも駆使して撮っているが、その頃の姿とは別の小鳥に見える程異なる。このビデオの姿が冬羽とされているが、9月中旬の頃なので、初秋であり、秋羽と呼びたいところだ。特に雄の夏羽(春〜初夏)は頭部全体が黒くなるので、その違いが顕著である。

ノビタキは蕎麦の花の近くの枝にツマヨウジ並みの細い足でとまり、飛んで来る虫たちを狙うのだが、発見するとフライングキャッチして又元の位置に戻る。

セイタカアワダチソウやススキのある休耕田、草原、河原等でも見られるが、その可憐な姿故に蕎麦畑の白い花がとても似合う。黄色いセイダカアワダチソウの花の先端にとまっているのも狙って見たが、不安定な様で、カメラを向けた時はもう飛び去っていることが多い。横向きに倒れた茎にとまったのがやっとピントをあわせるのが間に合って撮れた。それはそれで、絵になるのだが、花がらみとは言え、外来種はなるべく避ける様にしているので、発表する機会は少ないと思う。

オニオコゼとハオコゼ・毒棘にご用心

学名:Inimicus japonicus
英名:Devil stinger

魚とは思えないグロテスクな顔をしていて、周囲の環境に溶け込んでいるオニオコゼはじっくり見ないと判らない程のカムフラージュの天才である。

色彩には変異がある。泳ぎ方は独特で、胸鰭を波打たせる様にして移動する。真夏にはグローブやブーツを使わずに潜るダイバーもいるが、露出している肌を刺されることもあるので、うっかり海底には降りない方が賢明だ。特に海藻の生い茂った岩場は要注意である。着底したい時は、見晴らしの良い砂場に限る。背びれや胸びれの棘の毒はかなり強力で命にかかわる危険もある。

以前著書の魚図艦「海の魚」の取材中に、オニオコゼ同士の激しい争いを目撃したことがある。毒棘と言う武器を持った同士が戦うと、どうなるのかとしばらく見入っていた。面白い写真は撮れたが、相討ちかと思いきや、刺し殺しあうまでにはならなかった。

これと似たハオコゼ(ビデオの最後尾)は小型種ながら、同じように毒棘を持つので、手を出さないことだ。こちらはダイバーより釣人が被害にあうケースが多い。海藻の茂みにいると保護色なので、気が付かないので、まだ見たことがなければ、一度はじっくり探して、その姿を憶えておくと良いだろう。長年、ダイビングのインストラクターをやっていたので、「危険な生物」は意識して撮影し、多くのダイバーに紹介することにしている。

サルの惑星・山里編

学名:Macaca fuscata
英名:Japanese monkey

バードウオッチングに出かけると時々野生のサルに遭遇することがある。高度に文明が発達した現代でも、彼らは裸一貫で自然の中で暮らしている。

赤い顔とお尻には毛も生えていないので、人間ならパンツをはかないで、外出しているのと同じだ(これはヘイトスピーチかな?)ニホンザルにはホンドザルとヤクシマザルがいるが、こちらはホンドサル。東北や中部日本の猿は大型で尾は短い。

とにかく冬の寒さや食料の不安定な状況にも耐えて命脈を保ち続ける姿を見ると、人類にはない強い生命力を持っている様な気がする。長野県の地獄谷にある野猿公苑では雪の降る日に温泉に浸かる猿たちもいる。もし遠い将来に人類が滅亡したとしても、猿たちはこの地球上に生き残り、「猿の惑星」の世界が来る様に思えてならない。

観察していると、群れには数頭の強そうな雄猿がいる。若い雄猿たちは、常にやや遠慮して、遠巻きに離れて行動している。子供を抱いた母猿がいると、別の雌猿が一緒に子供をあやそうとしたり、毛ずくろいしながらお互いにノミとりをしたり、ファミリーで仲良く暮らしているので興味深い。柿の木に登っている時には、なるべく目立たない様に枝の密集したところに身を隠して食べていたり、渋柿は熟すまで残しておいて、甘い柿から選んで食べるなど、生活の知恵も垣間見える。

潮風の害は塩害(エンガイ)と言われるが地方によっては、猿による猿害もあり、下北半島等では相当数が毎年駆除されているそうだが、なんとか人類と共存させてあげられないものだろうか?

2014年10月2日木曜日

アユカケ・カマキリ・アラレガコ

学名:Cottus kazika
英名:Fourspine sculpin

アユカケは別名カマキリ、九頭竜川ではアラレガコと呼ばれる。霰の降る川を夜間に腹を上にして流れ降り、海へ出て産卵すると言う伝説があるが、私はまだその時の姿を見たことがない。近年何ヶ所も堰があるので、アユカケも激減してしまっており、昔の様な状況ではなくなっているらしい。又、中流部では大型の個体がいなくなってカジカよりひとまわり大きい程度のサイズばかりだ。

アユを捕らえて食べるその習性上、まずはある程度の大きさにならないとアユを飽食出来ないので、特大のサイズにはなれないのかも知れない。アクビをした状態を見ると、口はとても大きいので、自分の体長に近いサイズのアユでも飲み込めそうだ。「石化けの名人」と言われる様に、じっとしていると保護色であるし、底の石と区別がつかない。

普通は動きも緩慢で、それ程素早いとは思えないが、どの様にしてアユを捕らえるのだろうか?前から疑問に思っていたのだがある時、若魚のある動作が私を納得させてくれた。アユにアタックする時の準備運動なのか、素早く身をひるがえして、棘のある鰓蓋のあたりを石にこする様な動作を何度も繰り返していた。石の様に動かないで、獲物のアユをおびき寄せ、近づいた時にダッシュして襲う稽古をしている様に見えた。何時の日かその瞬間をビデオに収めたいと思っている。

ゴンズイをマアジが追尾

学名:Plotosus lineatus
英名:Striped catfish eel

ある時、越前の磯で潜っていると、海藻の茂った岩礁の上に、多数のマアジが群れているのが目に入った。マアジはそわそわと落ち着かない感じで、普通なら中層に群れる筈の回遊魚なのに、底近くにいたから、何事かと良く観察して見ると、海藻の茂みの中に、ゴンズイの群れがいるのに気が付いた。

ゴンズイは岩肌の上を編隊を組んで掃除でもしているかの様に移動している。なお良く観察すると、ゴンズイに追われて飛び出して来た小エビをマアジが争って捕食している。それでやっと、事態がのみこめたので撮影しながら観察を続けた。

僕は伊豆や房総半島での潜水時間が非常に長いけれど、これまでは、そんな状況を見たことがなかったのだ。日本海側では、マアジの若魚の群れが底近くで多く見られるのと、アラメの林は太平洋側の磯に多いカジメより丈が短いので、岩の上にエビ等が多いからかも知れない。そう言えば、メジナやアイゴの若魚の群れも、アラメやホンダワラの近くで多数見られる。

ゴンズイが群れを作るのは有名で「ゴンズイ玉」と言うが、実際にはなかなかまん丸くはならない。もう大分以前の話だが、丸い群れを撮ろうと長時間かけてねばった結果、やっと砂漠見たいな砂上を、ほぼ球形になって移動する群が撮れたので、喜んだことがあったのを思い出した。

坂井平野のマガン

学名:Anser albifrons
英名:White-fronted Goose

毎年秋になると福井市の北部、北潟湖との中間に位置する坂井平野にマガンの大群が現れる。以前、北海道の宮島沼へも取材に訪れているが、広い沼を埋め尽くす様に5〜6万羽ものマガンが羽を休めているのは圧巻だった。

沼の群も日中は近所の畑に分散して落穂をついばんだりするのだが、坂井平野の場合は湿地や水張り田んぼは少ないので、昼間だけ畑に集まっている。夜間は主に石川県南部の片野鴨池等へ移動して眠る様だ。畑を荒らされるので、箒を振り回して追い払う人もいない訳ではないが、多くの農民はマガンに寛大なので、坂井平野の居心地は悪くないのかも知れない。又、北海道と比べても、畑の形状が広大で平坦なので、もしキツネ等の外敵が現れても遠くから発見出来る為、餌食になることも避けられると言う安心感があるだろうし、餌となるコシヒカリの二番穂の味は格別なのかも知れない。

この大きな群に混じって、稀にハクガン、コクガン、シジュウカラガン、オオヒシクイ等がいることがあり、野鳥好きな連中はもっぱらこれらの珍鳥を探すことを楽しみにしているとのこと。実はまろもその一人なのだが・・・

2014年9月11日木曜日

ケリの交尾と子育て

学名:Vanellus cinereus
英名:Grey-headed Lapwing

ケリは中部、近畿に多い留鳥で、水田地帯や干潟で見られる。越前では生息数も多い普通種でほぼ1年中見られるが、関東以北では夏鳥で、あまりポピュラーな鳥ではない。じっとしていると雌雄同色の保護色で目立たないが、カラス等を追い払うために飛び回ったり(モビング)すると、新撰組の羽織を連想させる主翼の模様が印象的である。鳴き声はけたたましく、お世辞にも美声とは言えない。

交尾は突然始まり、ビデオの様にあまり求愛行動らしいきこともなく、数秒で終えるのでなかなか狙って撮れるものではない。ケリの巣は田んぼにあぜ道や、休耕田、空き地等にも作られるが、ヘビやイタチ等の外敵から卵を守るためか水田の真ん中に浮き巣の様に作られていることが多いので、普通は胴長でもはかないと接近して撮れない。雛はとても可愛いのだが、ふ化したその日に立ちあがって歩くことが出来るので驚かされる。

シギやサギの仲間は巣立ちが早いのは知っていたが、ケリはその仲間でもダントツかも知れない。親は巣立ちした雛を即、安全な草むら等に誘導し、外敵から見えない様にして保護する習性がある。猛禽類等の飛翔に気づくと、仲間と目いっぱいの警戒する声で鳴きあい威嚇する。和名はこの鳴き声に由来する様で、長い足で蹴りを入れるからではない様だ。

身近な毒蛇・マムシ

学名:Gloydius blomhoffii
英名:Japanese copperhead

長年アウトドアライフを楽しんで来た僕だが、こんなにギョットしたことはなかった。折りしもお盆休み中の事件である。実は我が家の横に植木を剪定した小枝を積んでおいたのだが、長雨ですっかり濡れてしまった。後で燃やすにしても、乾燥させておかなければいけないと思い、箒の先でひっくり返したところ、魚の餌になりそうなミミズが沢山いたので、お箸を使って、拾い始めていたら、すぐ傍の側溝にマムシがとぐろを巻いているのを発見したのだ。我が家は山沿いの一軒家ではなく、門前町風の田舎町の住宅地である。近くには草の生えた庭や、お寺の石垣もあるが、まさかマムシが潜んでいようとは夢にも思わなかった。

マムシの毒は強烈なので、大きな個体に噛まれると命にも関わるそうだ。恐る恐る観察すると、まるで寝ている様に動かない。急いで部屋に戻り、ビデオカメラと三脚を取って来て、撮影を開始。竹ざおの先で軽くつつくと素早い動きでジャンプし、噛み付いて来た。40cm位でマムシにしては大きめの個体。尾の先を震わせているのが不気味だ。

マムシは卵胎生で、繁殖期には5〜15匹もの子マムシを宿す。腹が膨らんだ雌はツチノコの正体とも言われている。地元の長老の話では、母乳の出る女性の髪の毛をムシロの下に入れておくとマムシが集るので、捕らえてマムシ酒に利用する人もいるとか。近所の子供が噛まれたりしても困るので、駆除する決心をし、生類哀れみの令もどこ吹く風と、棒で頭を殴ってから、お寺の掘に投げ込んだ所、ザリガニが集まって来て、捕食していた。ほっと胸をなでおろしてから2〜3日後、マムシの祟りか僕は酷い食あたりに苦しんだ。

サワガニのお散歩



学名:Geothelphusa dehaani
英名:Japanese Freshwater Crab

サワガニは日本固有種で、漢字名を「沢蟹」と書き、山沿いの渓流やきれいな小川に棲むイメージがある。しかし、大きな河川でも清流域なら多数生息している。

九頭竜川の支流足羽川(あすわがわ)でカジカ等を撮っていた時のこと、1匹のサワガニが川底をのんびり散歩しているのが目に入り、しばらく観察していた。川底にはヌマチチブが多い場所だった。その幼魚の場合はサワガニにじゃれついて遊んでいる様に見受けられたのだが、やがて大きい個体が現れると状況が一変した。

大型のヌマチチブはどうやら、餌と思ってサワガニに襲いかかっているらしいのだ。モクズガニと同様に、肺臓ジストマの中間宿主になっているので、生では食べない種類なのだが、ヌマチチブはおかまいなしだ。硬い甲羅のお陰で結局捕食されてしまうことはなかったが、サワガニも必死で大きな石の下に逃げ込んだりして身を守っていた。甲殻類は脱皮しながら成長するので、脱皮直後の殻の柔らかい期間あれば、防御する術がなかったのではないかと思われる。

サワガニは丸ごと唐揚げにしたり佃煮にして利用されるので、食べた経験がある方もおられると思う。日本各地の河川でかつては清流の象徴であったサワガニやカジカが激減しつつあるそうだが、寂しい限りだ。

2014年8月1日金曜日

カエルアマダイの不思議な動作

学名:Stalix histrio
英名:Jawfish

アゴアマダイ科の一種、カエルアマダイはマウスブリーダー。口内保育で、子供を育てる。運がよければ口の中に卵をいっぱい頬張った姿も見られる。口内でふ化した仔魚はしばらくの間、親の口の中で過ごす。

巣穴は砂礫底の地面に掘った垂直の穴で、顔だけ出して、周囲をうかがっていることが多い。稀に全身を見せてホバリングしていることもあるが、その状態は滅多に見られない。危険を感じると大きな石を口でくわえて、巣穴の入り口に蓋をして隠れ、しばらく出てこない。名前の様にカエルの様な顔をしていて愛嬌があるので、ダイバーの人気者である。

今回佐渡で遭遇した数匹の個体をしばらく撮影しながら観察している時、面白いアクションをしたのが偶然撮れたので、ご覧頂きたい。多分、威嚇行動だと思われるが本当のところは定かでない。

ツバメの子育て

学名:Hirundo rustica
英名:House Swallow

 我が家にツバメがやって来て、巣を作り始めたのは去年のことだ。駐車場はピロティ風になっていて、扉やシャッターはついていない。我が愛車パジェロのボンネットのちょうど真上の40W蛍光灯の横に泥を運び始めたので、これはたまらんと急遽泥除けを作った。富山の鱒寿司の蓋とか、敦賀名産のかまぼこの板を利用しての急拵えのものだ。しかし、ツバメは変な物をくっつけられて、警戒したのか、巣作りを途中でやめてしまい、それ以来こなくなってしまった。

それが、今年になって同じツバメと思われるペアが又やって来て、泥よけ板の上に巣を完成させ、卵を産み、抱卵を開始した。愛車はやむなく、斜めに駐車するなどして、糞害を予防していた。しばらくすると、無事ヒナが孵化した様で、親鳥はせっせと餌を運び始めた。毎日貸切で撮影出来る状況ではあったが、、逆光気味でやや暗いので、ライティングが必要なため、親が雛の面倒を見なくなってもいけないと撮影は巣立ち間際まで自粛していた。

そうしている内に3羽の雛の内最も育ちの良かった1羽が巣立ちしてしまったのだが、可愛らしいことに、時々又巣に戻ってきて、他の兄弟と一緒にいる。結局、このビデオを撮影した翌日が巣立ちの日となったが、その後2〜3日は近くの電線に親子でとまっている可愛らしい姿が目撃された。来年も来てくれるだろうか?

続、ヤマセミ・子育て中

学名:Ceryle lugubris
英名:Crested Pied Kingfisher

以前、ヤマセミの巣穴堀りの様子を紹介したが、今回は巣穴の雛にセッセと餌を運んでいた親鳥の様子を観察して見た。運んでくる魚は日を追う毎に大きくなり、この日もかなり大きめのヤマメみたいな魚も運んで来ていたので、巣立ちの日も近いのが判る。雛が何羽いるのか不明だったが、雌雄が交替で餌を運んでくる頻度は30〜40分に一回程度。車をブラインド代わりにして、車内から撮影した。

この日はたまたま友人のKさんを案内していたので、彼を後部座席、僕は助手席に三脚を立てて運転席から狙った。天気が良かったので、ガレ場の崖の周辺には陽炎もあり、距離が遠いだけにかなり厳しい。しかし、車内の窮屈さを忘れる程度にヤマセミが巣穴と餌場を往復する姿が見られたので、退屈することはなかった。

仲間のバードウオッチャーの話では、後日オシドリがやって来て、巣穴をのぞくと言うハプニングもあったそうだ。ヤマセミの穴はさすがにオシドリには小さいと思われるが、モモンガの使う様な小さな樹洞でも営巣することがあるらしいので、ヤマセミが巣立ったら、次はオシドリと言うダブルヘッダー的取材も運が良ければ出来たかも知れない。巣立ちはこの日から4~5日後に確認された。

2014年6月16日月曜日

釣魚・イシダイの若魚シマダイ

学名:Oplegnathus
英名:Striped beak perch

イシダイの幼魚は大変人懐こくて、海水浴をする人の体にまつわりついて来ることもある。地方名「チンボカミ」は良くその習性を現している名前だ。若魚になってもこの野次馬的習性は残っていて、潜っていると、向こうから近づいて来る。ダイバーが動くことで、底の砂泥が攪拌され、餌となるゴカイ類などが見つかるからかも知れない。

イシダイの歯は頑丈なくちばし状で、小さな貝類等を噛み潰して食べられる。イシダイを釣るにはサザエやシッタカ、ヤドカリなどを割って、中の身肉を針につけるが、小さな貝ならそのままでも食いつくかも知れないし、外道に餌を取られる心配がないだろう。

成魚〜老成魚になっても雌は縞模様が残るが雄はクチグロとなって顔が黒化し、縞々が不明瞭になる。餌となる食べ物がイセエビ、カニ、アワビ、ウニ、フジツボと上等だから当然味も良く、刺身から煮つけまで美味しく頂ける魚である。近似種のイシガキダイはサンゴ礁域にも生息するが、イシダイは豆南諸島のソウフ岩、南西諸島では屋久島位迄。北では夏場に積丹半島でも幼魚や若魚が見られる。(知床半島では見られない)

ひれで歩く魚・セトウシノシタ

学名:Pseudaesopia japonica
英名:Seto sole

カレイ目ササウシノシタ科の魚で、体に黒褐色の縞模様がある。シマウシノシタに似るが、尾びれと背びれやしりびれが分離している。

通常は100m前後の砂泥底に生息するが佐渡の小木では水深20m位の浅い場所でも見られた。砂中に潜って目だけ出していることもある。泳ぐときは体全体を波打たせる様にして泳ぐが、海底の砂礫底では背びれとしりびれを足の様に使ってホーバークラフト見たいに移動する。

体長15cmと小型であり、味の方は他のウシノシタの仲間に比べて美味ではないとの説が一般的なので、市場では値が付かないそうだが、瀬戸内海産は春から夏にかけては結構美味とのこと。

可愛いエナガの水浴

学名:Aegithalos caudatus
英名:Long-tailed Tit

エナガは人里周辺の森林で1年中見られる尾の長い愛くるしい小鳥だ。雌雄は同色。北海道には亜種のシマエナガが生息するが、私の場合、札幌に12年住んでいたので、撮り始めたのはシマエナガの方が先である。

雪の積もっている真冬でも、公園の餌台等に集まって来る。本州のエナガも同じ様に、真冬でも見られる小鳥で、カラスザンショウの実等を食べに来ているのを狙って撮影していた。(カラスザンショウはアゲハチョウの仲間が好む食草)しかし、春になって昆虫が増えてくると、より活発に餌を追って、飛び回る姿が見られる。

体重が軽いせいか、木の枝に逆さに止まることも珍しくない。初夏になると、小群で、頻繁に水場に現れ、水浴をする姿が散見される。常に外敵を恐れているのか、水浴はかなりせわしない。

2014年4月29日火曜日

夏鳥一番・クロツグミ


学名:Turdus cardis
英名:Grey Thrush

初夏に渡って来る夏鳥は、オオルリやキビタキ、コマドリ等を思い浮かべる人が多いと思うが、その先陣を切って現れるのがクロツグミだ。今回は北陸線のJR武生駅に近い村国山でのこと。桜の花びらを散りばめた様な桜並木の山道で地面を跳ね回って昆虫やミミズを探しているクロツグミの姿が見られた。

しばらく観察していると近くの岩の上でさえずる体勢になったが、あいにく、ガンマイクを装着していない方のカメラなので、別の鳥の声が録音されてしまった。と言うよりも、別の鳥の大きな鳴き声にかき消されて、残念ながら、クロツグミの鳴き声を上手く録音出来なかった。しかし、良く調べて見ると、クロツグミは他の鳥の鳴き声を上手にまねるとか。とすれば、別のクロツグミがさえずっていたのかも知れない。

クロツグミの雄は背中の側から見ると黒1色だが、くちばしや足は黄色く、白い腹部の周辺には、黒い三角班が散在する地味ながらシックな野鳥である。マニアの連中には事の他人気がある。終了間際に登場するのは雌で、ハチジョウツグミの様な羽の色をしている。この日は1羽の雌と2〜3羽の雄が見られたので、その附近で営巣してくれないものかと期待が高まった。越前市では、時々真冬にも出没するので、越冬する個体もいる様だ。

国内最小のチドリ・コチドリ


学名:Charadrius dibius
英名:Little Ringed Plover

初夏になると、干潟や水田等で、コチドリが餌を探す姿が見られる様になる。しばらくすると営巣期に入るが普通はチドリの仲間なので、どうしても営巣場所は水辺を想像してしまうのだが、コチドリが営巣するのは必ずしも水辺とは限らない。まあそれ程遠くない所に、川や水田があるにはあるが、草も生えていない様な内陸の造成地や埋立地などで、余り人の出入りがない場所も利用される。これは人間を用心していると言うよりも、卵や雛を狙うヘビなどが近づかないからではないかと思われる。

でも夏の直射日光の元では日陰もない砂礫の広場では高温になるため、雌雄が交代するとは言え、ふ化するまでの親鳥の苦労は計り知れない。炎天下では卵を温めるのではなく、茹で卵にならない様に、ビデオの様に体で日陰を作ってあげていることの方が多い。そして、一般にシギやチドリの仲間がそうである様に、ふ化してから、雛が歩き始めるまでのスピードは驚異的に速い。1日もたたない内に、親の後をついて回っているから感心する。そしてどの野鳥でもそうだが、コチドリの雛は格別に可愛い。まだ産毛の生えた体ながら、一人前に地面をつつき、餌を探すのには感心してしまう。

残念ながらまだビデオには撮れてないが、親は雛を襲う動物や人間が近づくと「擬傷行動」をするので知られる。自分が傷ついている様な仕草をして、感心をひきつけ、その間に雛を逃がそうとする知恵である。

2014年3月25日火曜日

オオハクチョウ・スワンの求愛

学名:Cygnus cygnus
英名:Wooper Swan

オオハクチョウは10月頃から渡来する旅鳥、または冬鳥で、北海道でも5月上旬までには北帰行する。バレエ「白鳥の湖」のハクチョウには清楚で上品なイメージがあるのだが、実際にはかなり騒々しく鳴くので、イメージとはやや異なる部分がある。

苫小牧のウトナイ湖の春、風のない晴天の湖はベッタリと凪いでおり、春の訪れを喜ぶ様に、数羽のオオハクチョウが求愛行動をしている場面に遭遇した。大きくはばたく様に主翼を上下させ、鳴き声を発しながら、雄が雌を追尾する。受け入れ体勢の出来た雌は向き合って、やはり大きな声で鳴きながら同じ様に首をのばして羽をばたつかせる。こうした求愛行動はコハクチョウでも同様だが、オオハクチョウは体が大きいだけに迫力がある。しかし、良く見ないと、必ずしも求愛行動ではなく、群れのなかのこぜりあいや威嚇の場合も同じ様な行動をするようだ。後半に登場するのは幼鳥で、全体に灰褐色をしている。

今年、越前の水はり田んぼにも10羽以上が舞い降りて、しばらく滞在していたが、3月中旬、きれいな夕焼け空が次第に暗くなり始める頃、北に向かって旅立って行った。

ユリカモメ・田んぼの夏羽

学名:Larus ridibundus
英名:Black-headed Gull

野鳥の図艦を見ると、全国的に渡来する旅鳥のユリカモメは頭部が白い冬羽の写真のみが載っている場合もあるが、夏羽では頭部から喉が黒褐色になり、目の周囲には白い縁取りがあって、まるで別種の様だ。一見ズグロカモメに似る。(ズグロカモメは体が一回り小さいが酷似する)カモメの仲間では最も内陸まで侵入する種類で、今回のビデオも海岸から遠く離れた福井市郊外の水田で遭遇した光景である。

春になるとあちこちの水田にトラクターが入り田んぼや畑を耕すが、その際沢山のミミズやドジョウ、カエル等が泥の中から姿を現すので、それを狙って集まって来る。ミミズをくわえては空腹のためか、洗いもせずに泥のついたまま飲み込んでしまう。この時は純群ではなく、セグロカモメとの混成群だった。と言ってもセグロカモメは1割程度だ。不思議なことに、泥の田んぼを歩いたりして飛び回っているのに、カモメの羽毛には泥が付かないことに気が付いた。そう、普通なら泥の水田で暴れていたら、泥まみれになるはずなのにと不思議に思う。羽毛の脂肪分が水と一緒に泥をはじき飛ばしてしまうのだろうか?農作業のトラクターとそれに集まるカモメの群れは北陸地方の春の風物詩になっている。

アカゲラ・夫婦で子育て


学名:Picoides major
英名:Great Spotted Woodpecker

アカゲラは北陸では余り多くないが、札幌近郊では、個体数も多く、初夏になると、あちこちの公園や市街地の緑地でも、営巣しているのを観察出来る。今回のビデオの子育ては、雛がかえってから巣立ちまで、何日も通って観察しながら撮影した。その営巣場所は真駒内公園内の樹木で、遊歩道からはやや外れた場所にあった。

アカゲラは雌雄が交互に餌を運んでくる。雄は後頭部が赤いので、雌雄は判るが突然、いろいろな角度から戻って来て巣穴に飛びつく。私のビデオカメラではタイムラグがあって、飛んで戻って来る姿を見てからシャッターを押しても間に合わないので、無駄を承知で、「記録」の状態にしておかないとその瞬間が撮れないが、横で撮影していた某テレビ局のカメラマン氏は巣穴にカメラを向けてセットし、巣穴に戻ってからシャッターを押しても、その7秒前からカメラが記録してくれるとかで、撮りそこなうことがないと言うからうらやましい。

アカゲラは生木に穴をあけて巣を作るので、樹木によっては営巣した次の年から弱り始め、次第に枯れてしまうことも多い。その結果半分枯れた様な樹木で営巣している場合も散見される。今後も、樹木は犠牲になっても、暖かく見守ってやって欲しいものである。

2014年3月1日土曜日

「淡水魚識別図鑑」発刊のご挨拶

まだダイバーの僕がカメラマンになったばかりの頃、当然ながら当初は海の魚介類を中心に撮っていたのだが、北海道へ取材に行く様になって、サケやサクラマスにロマンを感じ、興味を持つようになった。結果として山と溪谷社から「渓流の魚たち」と言う写真集でデビューし、大型の図艦「日本の淡水魚」の仕事もさせて頂いた。そしてその後何冊か魚の図艦を制作した。当時、日本に生息する淡水魚の数は200種類少々だとされていたので、その程度の数なら一人で全種類を撮れると思ったのだが、淡水魚は奥が深く、水中撮影に適した状況は年に何日もないので簡単には行かなかった。

私は水に潜るのは自信があるが、あくまでもカメラマンであって魚類学者ではない。とは言え、魚の専門家であっても全部に詳しい方は少なく、それぞれ専門の分野があると言うことを耳にしたので、広く浅く撮るのも良いが、何かは得意な分野を持たなくてはと、サケ・マスの仲間を集中的に取材し、せめてサケ・マスに関しては専門家並になりたいと北海道へ移り住んで取材を続けた。


今回はサケ・マス以外の魚種も種類数を増やしたがそれだけでなく、ビデオで撮影したカットからキャプチャーしたシーンも沢山入れて、斬新な本を目指した。本書のタイトルは識別図艦となっているので、小魚については、水槽撮影で魚体を鮮明に撮影した魚種も増やした。私が目指したのは自然環境で見た時に一目で分かる為の図艦で、机上で棘条を数えたり、鱗を数えたりするためのものではない。活魚を自分で、識別すると言う程度の一般者向けである。又、交雑の多いフナの仲間やどんどん分類が進んでしまうヨシノボリ、ドジョウ、メダカの仲間などは、正直な所、私自身も見分けられないものが増えて来て困っている。小型の図艦でもあり、これらは比較的知られる様になった主な種類しか掲載していないので、ご容赦頂きたい。とは言え、とりあえずこの本に載った魚を半分程度まで見ることが出来た頃に諸兄はマニアの仲間入りが出来るかも知れない。ポケット図艦だから携帯にも便利そうだ。川遊びに行くときは、是非お供に持参して活用して頂ければ著者としてうれしいかぎりである。

誠文堂新光社より3月14日発売予定。定価1,800円。

2014年2月23日日曜日

ヨシゴイ

学名:Ixobrychus sinensis
英名:Chinese little Bittern

新潟県の瓢湖には毎年夏季にヨシゴイが渡ってくる。通常、冬場には南へ移動してしまうが、南日本では越冬例もあるそうだ。

コウノトリ目サギ科のこの鳥はあっと驚く擬態の名人で、ハスの茎にとまってじっとしている場合、双眼鏡でも使って良く見ないと見つけられない程だ。水面近くを泳いでいる魚から水面上を見た時、魚眼レンズで広角に見える魚の目には、ハスと言う植物の一部にしか見えないに相違ない。両足をハの字にして茎にとまっていると、大きさはハト位と小さい上に、体色が淡褐色なので全く鳥には見えない。羽を広げて動いたり、飛んだりすれば、風切羽は黒いので、はっきりと見えやすくなる。

水面の魚を捕食する時は、頸部を棒状に伸ばし鋭いくちばしで、素早くしとめる。見ていると、魚やカエルを捕食することが多いが、顔の前に飛んできたトンボを捕らえる早業も見せてくれた。湖面に浮いているハスの葉の上を自在に歩き回る姿はまるで忍者が水ぐもの術を使っている感じだ。人間なら大きいゴムボートでも並べないとこんな芸当は出来ないだろう。湖のハスはところどころにきれいな花が咲いているので、その花がらみで撮りたいと粘って見たが、形の良い花が少ない時期だったので、ほどほどにあきらめ湖を後にした。

タンチョウ

学名:Grus japonensis
英名:Japanese Crane

タンチョウの故郷は何と言っても釧路湿原。タンチョウに冬場餌を与えて保護している鶴居村の給餌場には多くのタンチョウが集まってくる。この給餌場のお陰で、絶滅が心配されたタンチョウの個体数も順調に回復している様だ。

湿原では夜間、安全に眠れる場所も不可欠で、少し離れた場所には川の中にたたずんだまま眠れる川があることも大切な条件であるが適当な距離にそのねぐらの阿寒川や雪理川もあり、雪理川では音羽橋から群の様子が観察出来る。給餌場で待っていると、飛来する群やペアが鳴き交わす求愛行動なども観察されるので、カメラマンも多数ここに集まる。前回は雪景色の中で撮影したのだが、今回は枯れ草の季節だったので、環境としては余り好ましくない。

タンチョウは白い鳥だから、雪の上でない方が見栄えがすると思いがちだが、その白い雪の上にいる時ほど、美しさが際立つから不思議である。九州では毎年冬になると、マナズルやナベズルが飛来して来るが、その美しさにおいてはタンチョウの右に出るツルの仲間はいないのではないかと思う。おまけにタンチョウは頭の頂上に日本の国旗の様な赤くて丸い模様があるまさに「日本の象徴」と言う感じがする野鳥である。

サケ(シロザケ)

学名:Oncorhynchus keta
英名:Chum salmon

北海道や東北の河川には毎年秋になると、サケの群れが帰ってくる。故郷の川から旅立った稚魚は、しばらく沿岸の藻場で海水に体を慣らした後、外洋へと旅立ち、4年後にその超能力によって、母川に回帰する。遡上したサケの多くはウライと言うヤナで捕獲されて、次の人工ふ化事業の為に利用されるが、増水などで、ウライを乗り越えたサケの一部は上流の産卵場所にたどり着く。

腹の卵が熟して来ると。雌は湧き水がある様な川底を尾びれを使って掘り始める。ここで待機している雄同士の争いが激しくなる。雄たちは自分がパートナーになって、子孫を残そうと激しく争い、雌を奪い合う。雌は観察する限り雄を選り好みせず、勝った方の、強い雄をパートナーにする様だ。

この争いによって、常に強い雄の子孫が誕生することが繰り返されてきた結果、今日の大きくてたくましいサケとなって進化してきたのであろうか。しかし、面白いことに必ずしもビデオに登場するこの2匹の立派な雄のどちらかが勝ち残るとは限っていない。そっとこの闘争の様子をを離れた所からうかがっていた小型の弱々しい雄のサケ(通称スニーカー)がどさくさに紛れて産卵の瞬間にパートナーを勤めてしまうこともあるからだ。

2014年1月21日火曜日

派手な衣装の旅鳥・ツクシガモ


学名:Tadorna Tadorna
英名:Common Shelduc

ツクシガモはユーラシア大陸の温帯域に広く分布する鴨だが、少数が冬季に日本へも渡って来る。九州北部の諫早湾の干拓地辺りに渡来が多かったので「筑紫鴨」の名がある様だ。体色はパンダを思わせる白黒と茶の派手目なまだら模様で、頭から首にかけてはツヤのある緑黒色、真赤なくちばしが特徴の鴨である。鴨類には珍しく雌雄同色だが、繁殖期の雄は額のこぶが膨らむとか。

地元の福井新聞に、その日、「若狭地方の水田に珍鳥飛来」の写真と記事が載っていたので、即、出かけて見た。迷鳥は気まぐれだから、何時まで滞在してくれるか判らないので、情報を見たり聞いたりしたら、なるべく早く現地に行く様に心がけている。田舎ではアマチュア・カメラマン(ギャラリー)が集まっている訳ではないので、通常は最初に狙いの野鳥がいる場所を探すまで一苦労だが、今回は見通しが利く田んぼに群れでいてくれたので、直ぐに発見出来た。ツクシガモはマガモよりやや大きく、マガンよりやや小さいサイズだ。田んぼで餌を探しながら、歩いたり、泳いだりしている群れを写真とビデオで撮り、最後には粘って、群れで飛びたち編隊飛行する様子も撮影出来た。当日も珍しい野鳥に出会えた感動を胸に帰途に就いた。

神の遣いか・白いカモシカ

学名:Capricornis crispus
英名:Japanese serow

福井県には、神社仏閣が多い。そうした場所には鎮守の森がつきものであるが、神社の裏手がそのまま森につながっている所も少なくない。

ある時ロケハンで山沿いの神社をまわっていると、その裏山の中腹でこの白いカモシカと遭遇した。全身の毛が白くなったカモシカは神の遣いとして大切に保護している地方もあるという話をどこかで聞いたことがある。しかし、地元のハンターに後で聞いた話では、歳を取ると白髪になる人間と同じで、老化現象だと言う。神様が只の老いぼれと言われては天と地の開きがあろう。ちなみに普通の灰褐色のカモシカは後半に紹介している。山の渓流に添った林道を車で上流に向かっていた時に堰堤の上を歩いていた個体だ。カモシカは山道を車で走っていると、シカの様に突然横から飛び出して来て、クルマと接触しそうになることがある。しかしカモシカはシカの仲間ではなく、ウシやヤギの仲間(ウシ目ウシ科カモシカ属)であるから、鹿の様に角が生え変わることはないとのこと。又、カモシカの寿命は普通15年程だが稀に20年生きる個体もいるそうだ。

1934年に国の天然記念物に、1955年には特別天然記念物に指定されている。その結果、肉と毛皮を取る目的で狩猟の対象にされて来たカモシカも近年は頭数が回復して来たので、その食害が問題になっている。

コウノトリ・越前のえっちゃん

学名:Ciconia ciconia
英名:White Stork

兵庫県豊岡市にある兵庫県立コウノトリ郷公園からその後、野生に戻されたコウノトリは70〜80羽程にもなり、以前の様に国内絶滅の心配もなくなって来たらしい。以前放鳥された内の何羽かは福井県へも飛来している。その内の1羽が越前市に長く滞在したので「えっちゃん」と名付けられてから久しい。今回はそのえっちゃんが我が家から車で10分もしないで行ける田んぼに降りていた時の記録を紹介しよう。

鳥仲間が見つけて知らせてくれたがギャラリーは私と二人だけで、大都市近郊と違い、大勢が集まってくることはない。コウノトリはその長いくちばしで、泥底をつつく様にしてドジョウやザリガニなどを探して食べていた。最初は遠慮して50メートル位離れて観察と撮影をし始めるのだが、人間には比較的慣れている感じで、向こうから次第に接近して来て10メートルも離れていないつい目と鼻の先で、せっせとドジョウ等を探して食べたりしてくれる。タンチョウと背の高さは余り変わらない感じだが、くちばしが太く大きいのと、がっしりした体形なので、やや大きく見える。又、タンチョウは優しい目つきをしているが、コウノトリの目は鋭い眼差しなので高貴な感じがする。同じ場所にしばらく滞在してくれたが、ドジョウを沢山食べて満足したのか、やがて何処へともなく、飛び去って行った