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2012年6月22日金曜日

ゴジュウカラの子育て

英名:Nuthatch(Eurasian Nuthatch)
学名:Sitta europaea

札幌の郊外に藻岩山と言う軽登山者向きの山がある。その麓では毎年の様にクマゲラが営巣するので、その時期になると野鳥愛好家が集まって来る。その年も鳥仲間に誘われて現地へ足を運んで見たが、まだギャラリー(野次馬の意味?)は集まっておらず、「せっかく来たのに、まだ早く無駄ではなかったですか?」と、友人に話かけると、彼はうなずきながら1本の太い樹木を指差した。

前の年までクマゲラが営巣していた樹洞にゴジュウカラがちゃっかり入り込んで子育てをしていたのだ。クマゲラは体も大きいので、樹洞の入口も大きい。ゴジュウカラは粘土みたいなもので、自分たちの体のサイズに合った小さい穴に改造して使っていたのには感心した。

ゴジュウカラは無重力の宇宙から渡って来たのではないかと思われる様な習性がある小鳥で、木の幹にさかさまにとまり、旋回する様に歩きまわることが出来る。これは簡単そうだが、他の小鳥には出来ない芸当である。又、餌台にヒマワリの種などを置いておくと、木の皮の割れ目にそれを運んでクチバシをハンマー変わりに使い埋め込んで隠したりする。雪に閉ざされる冬の間の備蓄だと言う人もいるが、あちこちに隠すので、隠匿場所を忘れてしまうケースも多いのではないかと思われる。

子育ては雌雄が交替で餌を運んでいたが、樹木に沢山登ってくる蟻なども素早くキャッチして食べていた。北海道ではゴジュウカラは珍しい小鳥ではないが、こうした営巣と子育ての様子は一日中見ていても飽きない程新鮮だった。


カワシンジュガイとヤマメ

英名:Feather Pearl shellfish
学名:Marugaritifera laevis

カワシンジュガイは淡水に生息する二枚貝で、イシガイの仲間。その昔広く日本全国の河川に生息していましたが、近年、護岸工事等により、生息に適した環境が失われるにつれて、生息地や個体数が激減してしまい、現在は環境省の絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。又、山陰地方では地域指定の天然記念物になっている。

カワシンジュガイが生息出来る条件として、自然環境もさることながら、産卵期に雄貝の精子を取り込んだ雌貝は体内で受精し、幼生を放出しますが、その幼生(グロキジウム)はある期間、ヤマメ等の鰓に寄生しないと生きて行けないと言う、不思議な生態が知られています。つまり、ヤマメとは切っても切れない間柄と言う訳です。

水温が上がり始める初夏、幼生はヤマメの鰓を離れて底生生活に移り長い時間をかけて成長します。人間より寿命が長い貝で、200年程も生きると言われれています。私がこれまで水中撮影をして来た河川では数個の貝や空殻を見つけたりしたことはありましたが、生きている状態で、これだけ多数の群落が現存するとはそれまで知りませんでした。

撮影したのは、北海道某河川の上流部に位置する岸近くのワンドです。水深は1mと浅いですが、流れはかなり速いポイントで、通常の倍位のウェイトを付けていないと流されてしまいそうな状況です。

カワシンジュガイは別名:タチガイとも言われ、底から直立した状態で口を開いています。ワンドでは流れが巻き込んでいるので、本流の流れとは逆の方向に向かって口を開けていました。


2012年6月9日土曜日

オシドリの交尾

英名:Mandarin Duck
学名:Aix galericulata

オシドリの雄はオレンジ色の銀杏羽が美しく嘴も赤いが、雌は嘴も灰黒色だし、灰褐色の地味な体色である。用心深い野鳥と言われているが、公園の池等では餌をあげると手の触れそうな距離にまで接近出来る。

繁殖期には大木の樹洞に営巣して子育てをするのも普通のカモ類にない習性だし、好物が藻類などではなくドングリと言うのも変わっている。「オシドリ夫婦」と言う言葉もある様に夫婦仲の良いカモ類として知られるが実際にはどうだろうか?オシドリの小群が生息する近所の山上湖で撮影しながら観察していた時、偶然に求愛行動から交尾までを目撃するチャンスがあった。

その時雄は雌の上に乗り交尾の体勢になったのだが、雄の重みで雌が水中に潜ってしまったのだった。雌は苦しかったに違いない。今年は雪解けが遅れたため、その湖へ行く林道が閉鎖されていたので、オシドリの繁殖行動を観察するのをあきらめていた。

しかし1ケ月程遅れて、数羽が田植えの終わったばかりの水田に姿を現した。しばらく観察していると、あぜの上で昼寝をしていたペアが田んぼに下りて求愛行動を始めた。今度こそはとビデオを構えて待つと、雄はついに雌の上に乗った。浅い水田なので今回は雌の頭部まで水中に没することなく、交尾を始めたが、何と雄は自分が落っこちない様に雌の頭部の羽毛に噛み付いており、以外にも乱暴でやさしくない交尾だった。

オシドリの雄は雌が樹洞で抱卵を始めると夫婦生活に区切りを付けて群に戻り、又別の雌を追いかけることもある。人間でさえ、おしどり夫婦と噂されていても実は喧嘩ばかりしている夫婦もいるし、浮気する夫も少なくないから仕方がないのかも知れない。