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2015年12月23日水曜日

海藻を飽食するブダイ

学名:Calotomus japonicus
英名:White-spotted parrotfish

赤い顔に白い臼歯が突き出した口で、岩に付着した海藻をむしり取る様に食べているブダイを見つけた。体全体で踊る様にしてダッシュするので、漢字名の「舞鯛」を思わせる行動である。温帯種で、三崎地方や伊豆半島ではアカブダイ、関西ではイガミ、高知県ではエガミなどの地方名がある。赤味の強い大きな方が雌で、青みがかっていて小さめの方が雄だ。

ブダイは愛想のない魚なので、ダイバーには余り人気がないが、冬期には味が良くなるので「寒ブダイ」と呼ばれ、好んで狙う釣人もいる。若かりし頃、東海汽船を利用して伊豆七島の島々へ潜水ツアーを繰り返していた時期があるが、大島の民宿で食べた「ブダイの甘酢あんかけ」の味が今でも懐かしく思い出される。夏場には甲殻類や底生動物を食べるので磯臭いが、冬は主に海藻を食べるので臭みがなくなる。潮汁や味噌汁の他、バター焼き、煮付け、てんぷら、から揚げ等の他あらいにして酢味噌で食べても美味しい。

砂底の忍者・ヒラメ

学名:Paralichthys olivaceus
英名:Olive flounder

ヒラメは砂に潜って目だけ出していることが多い。砂に潜り込む時にはどう言う風にして潜るのか、意外にその瞬間を見た人は少ないかも知れない。今回、1匹のヒラメがドルフィンキックで泳いでいるのを発見して、後を追って見ると、そのまま砂場に着底して、砂をかぶってくれたので、貴重なカットが撮れた。

体色はとたんに砂場の色に変わる。砂中に潜んでいるときは、カムフラージュに自信があるのか、かなり近づいても逃げない。海底にいる時のヒラメの姿を見る限りでは底生の魚の様にしか見えないが、上層のキビナゴやカタクチイワシの群れを発見するとダイナミックに水面近くまで追いかけて捕食する。その大きな口と鋭い歯は狙った獲物をしっかりと捉えることが出来る様だ。

以前、南伊豆の石廊崎で潜っていた時、畳1枚サイズの大型を目撃したことがある。老成魚はオヒョウに匹敵する程大きくなる種類だ。美味な高級魚なので、近年は養殖も盛んに行われており、背側まで色素が無く、白い斑模様のある養殖個体も散見される。

熱帯魚風のテングダイ

学名:Evistias acuterostris
英名:Banded boarhead

熱海沖の初島で久しぶりにテングダイに遭遇した。ペアか親子かは不明だが、大小のサイズが仲良く潮に向かって大きな岩の間に定位している。大型の方は体長50cm以上はあるだろう。小型の方は黄色い背びれが長くて熱帯魚風の美魚だ。

神奈川県三崎では天狗鯛と呼ばれるのだが、三重県ではキンチャク、長崎県ではマンザイダイ、アブラウオ、ハタヒシャなどとも呼ばれる。口は長く突出しており、 黒くて見え難いが下顎の下部には短いヒゲが密生している。春から秋が旬で味の方はなかなかの美味らしいが漁獲量は少ない。 通常やや深い海底に生息するが、潮が速い場所では、水深20m前後にいることも多い。

そう言えば、潮がブンブンの南房総西川名沖で潮流に向かって定位している5〜6匹の小群に出会って以来かも知れない、などと考えながらハイビジョンのビデオカメラで迫る。明るいLEDのビデオライトを向けていたら「まぶしくて困るよ」と言わんばかりに、小型の1匹が後方へ逃げてしまったので、ランデブーは終了となった。