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2014年3月25日火曜日

オオハクチョウ・スワンの求愛

学名:Cygnus cygnus
英名:Wooper Swan

オオハクチョウは10月頃から渡来する旅鳥、または冬鳥で、北海道でも5月上旬までには北帰行する。バレエ「白鳥の湖」のハクチョウには清楚で上品なイメージがあるのだが、実際にはかなり騒々しく鳴くので、イメージとはやや異なる部分がある。

苫小牧のウトナイ湖の春、風のない晴天の湖はベッタリと凪いでおり、春の訪れを喜ぶ様に、数羽のオオハクチョウが求愛行動をしている場面に遭遇した。大きくはばたく様に主翼を上下させ、鳴き声を発しながら、雄が雌を追尾する。受け入れ体勢の出来た雌は向き合って、やはり大きな声で鳴きながら同じ様に首をのばして羽をばたつかせる。こうした求愛行動はコハクチョウでも同様だが、オオハクチョウは体が大きいだけに迫力がある。しかし、良く見ないと、必ずしも求愛行動ではなく、群れのなかのこぜりあいや威嚇の場合も同じ様な行動をするようだ。後半に登場するのは幼鳥で、全体に灰褐色をしている。

今年、越前の水はり田んぼにも10羽以上が舞い降りて、しばらく滞在していたが、3月中旬、きれいな夕焼け空が次第に暗くなり始める頃、北に向かって旅立って行った。

ユリカモメ・田んぼの夏羽

学名:Larus ridibundus
英名:Black-headed Gull

野鳥の図艦を見ると、全国的に渡来する旅鳥のユリカモメは頭部が白い冬羽の写真のみが載っている場合もあるが、夏羽では頭部から喉が黒褐色になり、目の周囲には白い縁取りがあって、まるで別種の様だ。一見ズグロカモメに似る。(ズグロカモメは体が一回り小さいが酷似する)カモメの仲間では最も内陸まで侵入する種類で、今回のビデオも海岸から遠く離れた福井市郊外の水田で遭遇した光景である。

春になるとあちこちの水田にトラクターが入り田んぼや畑を耕すが、その際沢山のミミズやドジョウ、カエル等が泥の中から姿を現すので、それを狙って集まって来る。ミミズをくわえては空腹のためか、洗いもせずに泥のついたまま飲み込んでしまう。この時は純群ではなく、セグロカモメとの混成群だった。と言ってもセグロカモメは1割程度だ。不思議なことに、泥の田んぼを歩いたりして飛び回っているのに、カモメの羽毛には泥が付かないことに気が付いた。そう、普通なら泥の水田で暴れていたら、泥まみれになるはずなのにと不思議に思う。羽毛の脂肪分が水と一緒に泥をはじき飛ばしてしまうのだろうか?農作業のトラクターとそれに集まるカモメの群れは北陸地方の春の風物詩になっている。

アカゲラ・夫婦で子育て


学名:Picoides major
英名:Great Spotted Woodpecker

アカゲラは北陸では余り多くないが、札幌近郊では、個体数も多く、初夏になると、あちこちの公園や市街地の緑地でも、営巣しているのを観察出来る。今回のビデオの子育ては、雛がかえってから巣立ちまで、何日も通って観察しながら撮影した。その営巣場所は真駒内公園内の樹木で、遊歩道からはやや外れた場所にあった。

アカゲラは雌雄が交互に餌を運んでくる。雄は後頭部が赤いので、雌雄は判るが突然、いろいろな角度から戻って来て巣穴に飛びつく。私のビデオカメラではタイムラグがあって、飛んで戻って来る姿を見てからシャッターを押しても間に合わないので、無駄を承知で、「記録」の状態にしておかないとその瞬間が撮れないが、横で撮影していた某テレビ局のカメラマン氏は巣穴にカメラを向けてセットし、巣穴に戻ってからシャッターを押しても、その7秒前からカメラが記録してくれるとかで、撮りそこなうことがないと言うからうらやましい。

アカゲラは生木に穴をあけて巣を作るので、樹木によっては営巣した次の年から弱り始め、次第に枯れてしまうことも多い。その結果半分枯れた様な樹木で営巣している場合も散見される。今後も、樹木は犠牲になっても、暖かく見守ってやって欲しいものである。

2014年3月1日土曜日

「淡水魚識別図鑑」発刊のご挨拶

まだダイバーの僕がカメラマンになったばかりの頃、当然ながら当初は海の魚介類を中心に撮っていたのだが、北海道へ取材に行く様になって、サケやサクラマスにロマンを感じ、興味を持つようになった。結果として山と溪谷社から「渓流の魚たち」と言う写真集でデビューし、大型の図艦「日本の淡水魚」の仕事もさせて頂いた。そしてその後何冊か魚の図艦を制作した。当時、日本に生息する淡水魚の数は200種類少々だとされていたので、その程度の数なら一人で全種類を撮れると思ったのだが、淡水魚は奥が深く、水中撮影に適した状況は年に何日もないので簡単には行かなかった。

私は水に潜るのは自信があるが、あくまでもカメラマンであって魚類学者ではない。とは言え、魚の専門家であっても全部に詳しい方は少なく、それぞれ専門の分野があると言うことを耳にしたので、広く浅く撮るのも良いが、何かは得意な分野を持たなくてはと、サケ・マスの仲間を集中的に取材し、せめてサケ・マスに関しては専門家並になりたいと北海道へ移り住んで取材を続けた。


今回はサケ・マス以外の魚種も種類数を増やしたがそれだけでなく、ビデオで撮影したカットからキャプチャーしたシーンも沢山入れて、斬新な本を目指した。本書のタイトルは識別図艦となっているので、小魚については、水槽撮影で魚体を鮮明に撮影した魚種も増やした。私が目指したのは自然環境で見た時に一目で分かる為の図艦で、机上で棘条を数えたり、鱗を数えたりするためのものではない。活魚を自分で、識別すると言う程度の一般者向けである。又、交雑の多いフナの仲間やどんどん分類が進んでしまうヨシノボリ、ドジョウ、メダカの仲間などは、正直な所、私自身も見分けられないものが増えて来て困っている。小型の図艦でもあり、これらは比較的知られる様になった主な種類しか掲載していないので、ご容赦頂きたい。とは言え、とりあえずこの本に載った魚を半分程度まで見ることが出来た頃に諸兄はマニアの仲間入りが出来るかも知れない。ポケット図艦だから携帯にも便利そうだ。川遊びに行くときは、是非お供に持参して活用して頂ければ著者としてうれしいかぎりである。

誠文堂新光社より3月14日発売予定。定価1,800円。