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2013年10月3日木曜日

遠山川のヤマトイワナ

学名:Salvelinus leucomaenis japonicus
英名:Kirikuchi char

長野県の南部をながれる天竜川水系の遠山川は数少ないヤマトイワナの生息地である。ニッコウイワナはこれまで何箇所か取材しているが、ヤマトイワナは未撮だった。

遠山川のことを知ったきっかけは、2年間、信濃毎日新聞に「魚ッチング」と言う魚介類の連載をしたのがきっかけだった。なぜなら、1日遅れで毎日その掲載紙が送られて来るのだが、地方紙は野鳥、魚、動物、釣り等アウトドアの内容も多いので、自分の記事をスクラップするついでに読むのを楽しみにしていた。そして目に入ったのが、漁協ぐるみで、ヤマトイワナの保護活動をしている記事だった。

そして取材の当日、漁協に紹介されたYさんの案内で、遠山川上流へ向かった。そこは本州にこんな奥の深い山々があったのかと思われる程の山奥である。昔から大洪水が頻発していた遠山川は、高い堰堤がいくつもあって、とてもイワナが遡上出来そうもない。

漁協ではこれまで、釣り人のためにアマゴやニッコウイワナを放流しているので、下流部では交雑も起きているとのこと。しかし、上流に設けられた産卵場所近辺のイワナはこれまで見たニッコウイワナとはどことなく違っていて、上流に行くほど純血種のヤマトイワナなのかと思われた。さらに車で行けない山奥の支流にはヤマトイワナの聖地(禁漁区)もまだ残っているとのこと。幻のイワナの話に夢が膨らむ取材だった。

早瀬のカワヨシノボリ

学名:Rhinogobius flumineus
英名:lizard goby

カワヨシノボリは中流から上流の流れのある川底に生息している。普通、ヨシノボリの仲間は雄より雌が大きく、繁殖期の雄は、他の雄が縄張りに侵入すると、各ひれを立てて自分を大きく見せ、大きな口を目いっぱい広げて、相手を威嚇するが、カワヨシノボリはその代表選手で、頻繁にその行動をする。

この日も大きなビデオカメラに2個のライトを煌々とつけて私が接近しても、お構い無しで闘争シーンを繰り広げていた。雄の第一背びれは大きくて輝く様な色彩であり第二背びれも先端部が明色なので、良く目立つ。おまけに顎が外れないかと思うほど大きく口を開くので、外敵に対する威嚇の効果も大きい。詳細を観察する為に、友人に分けて貰ったペアをしばらく水槽で飼っていたが、余り長生きしないで、半月程で死んでしまった。

淡水魚仲間に聞くと、どうも生き餌しか食べないそうで、冷凍アカムシなどに餌付けばかなり長期間飼えるとのこと。しかし、自然の生き物はやはり生息地の自然の中で観察してこそ意味があると思う。私がこのシーンを撮影してからしばらくして、台風による豪雨があり、若狭湾にそそぐこの清流も50年に一度あるかないかと言う災害に見舞われた。ビデオに登場したカワヨシノボリは無事だったのだろうか?

淡水魚の王者・コイ

学名:Cyprinus carpio
英名:Common carp

鯉は我が国の淡水魚の王者である。体長1.5メートルの記録もある。床の間の掛け軸では鯉が滝を登る姿が描かれているが、残念ながらコイは垂直の滝は登れない。

中国の登竜門の故事には黄河上流の竜門山を切り開いて出来た急流を元気なコイだけが登りきって竜になれると言う言い伝えがあり、立身出世を願ってこれを絵に描いたものである。

多くの日本人は黒っぽいコイや、錦鯉が泳ぐ姿を池の水辺や橋の上から観察したことがあるだろう。ゆったりと泳ぐコイの姿は何となく心を癒してくれるものを感じる。

餌を与えて見ると、パクパクと一旦口に入れるが餌をそのまま飲み込むのではなく、モグモグと喉の奥で噛み砕いてから食べているのが分かる。そうコイ科の魚は口の中には歯がないのだ。水面上から見たコイは丸太状に見えるが、水中から見ても丸太状の野ゴイ型は最近では少なくなってしまって、体高の高いヤマトゴイ型が殆どである。

今回ビデオに紹介しているコイは世界遺産となった富士山を望む山上湖で撮影したものだが、やはりヤマトゴイのタイプで野鯉ではない。砂泥底からカワニナやタニシ等の巻貝を探し出し、喉に有る咽頭歯という丈夫な歯でかみ砕いてから飲み込む。夜行性ではないので、夜は倒木や岩の陰などで眠っている姿が見られる。