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2013年8月21日水曜日

コアジサシ・中洲の子育て

学名:Sterna albifrons
英名:Little Tern

石川県を流れる某河川の下流にある中洲は知る人ぞ知るコアジサシの繁殖地である。今年も約150羽が営巣して子育てをしていた。撮影は中州を望む岸辺から狙うことになるのだが、距離的にはやや遠いのが難点ではある。親鳥が雛に運んでいるのは季節柄アユが主で、活魚の美味なアユを飽食して雛はぐんぐん大きくなっている様子だ。

営巣している地面は砂利なので、親鳥はカンカン照りの中で卵を抱いている訳だが、暖めると言うより、立ち上がって卵が暑くなり過ぎない様に、日陰を作ってあげていることが多い。やや大きくなった雛の場合は近くの雑草の根元附近の日陰に身を寄せて、時々餌を運んで来てくれる親鳥を待っている。

親鳥は雛に餌を食べさせた後、集団で水浴をしたり、川面に飛び込んだり、飛びながら嘴をつっこんで水を飲んだりして熱中症の予防らしい行動をしているので、このタイミングを狙って、かっこよく翼を広げて飛ぶ姿をスチール写真で捉えることに挑戦して見た。

彼らの飛翔は素早いので、最初はフレーム内にその姿を入れることすら難しいが、何度か懲りずにやっていると、だんだんそのパターンが飲み込めて来て、マニュアル・フォーカスながら徐々ににピントのあったカットが撮れる様になった。

今回はビデオの途中にこうして撮ったスチール写真をズーム機能を使って挿入して編集した。ビデオではストップ・モーションにしても、くわえている魚がアユなのかオイカワなのか判らないからだ。我々は猛暑の中2〜3時間は頑張ったが、撮影を終了し、その場に別れを告げた。

その後2〜3週間経って、北陸地方は近年にない豪雨に見舞われ、中洲まで水をかぶったと地元のバーダーから報告があった。あの雛たちは洪水の前に全員無事巣立つことが出来ただろうか?その日の夜、親鳥が雛を掴んで舞い上がる姿を夢に見た。

夜の湖底で出会ったウナギ

学名:Anguilla japonica
英名:Japanese eel

ウナギは夜行性なので、昼間岩の隙間や護岸の石垣の間に潜んでいて、探してもなかなか見つけることは難しい。ウナギは暗黒の深海で産卵する訳だし、暗闇でも行動出来る超能力をもっているのだから、夜間に俳諧するのは身を守るためとか言うよりも餌との関係が大きいと思われる。甲殻類も夜行性が多いし、小魚は睡眠中なので、寝込みを襲いやすいことがその理由と思われる。

その日は夕方まで、少し風があって湖の水面にはさざ波があった。多少の波でも水中撮影には好ましくないので、夕方の潜水を早々に切り上げ、車中で仮眠していた。夜中の1時過ぎになってふと眼をさますと、山上湖の上空にはまだ黒雲が残っているものの、湖面には微風もなく、ベタ凪の状態になっていた。

ウナギに負けず夜鷹の習性が抜けきらない私は次第に目が冴えて来て、体調も絶好調である。今回もアシスタントのいない取材だが、家で待つ娘のためにも必ず生きて戻ってこなくてはならない。しかも手ぶらではなく、目的の映像を撮って帰らなくてはならないと改めて気を引き締める。

潜水器材とビデオカメラ関係を入念に再チェックし、シトシトピッチャンと静かに水面下の人となる。今回は水中ライトNEMOの他にHDカメラには 3500ルーメンのAQUAVOLT ・LEDライトを2ケセットしたので、透明度のあがった水中はこの上なく明るく小気味良い。次々とご覧の様に、大きなウナギが出没し、モデルになってくれた。20年前に良く通ったポイントであるが、今も往時のままの生態系が残っていてタイムスリップした様な一夜だった。

雛が可愛い・アオバズク

学名:Ninox scutulata
英名:Brown Hawk Owl

我が家のほど近い場所に霊峰日野山がそびえていて、事務所の窓からもその山頂を望めるのだが、その麓の登山道の入り口に日野山神社があり、毎年初夏の頃にアオバズクが渡って来て、子育てをする。雛が巣立つ頃には、親鳥が見張りに出ているので発見しやすい。又、稀にブッポウソウが近くにいることがあるのでその営巣も期待していた。

今年もブッポウソウは駄目だったが、巣立ったばかりのアオバズクの雛を撮りたいものだと待ち構えていると、数日後、仲間から「雛が出たよ」と言う電話が入ったので、早速出かけて見た。アオバズクの雛は4羽のことが多いそうだが、この時はご覧の様に2羽の雛と1羽の親鳥が並んで高い小枝にとまっていた。

普通のフクロウの雛も可愛いが、アオバズクの雛はクリクリ目玉ですこぶる愛らしい。私がカメラを覗いている時、友人が良く見える位置へ三脚ごとカメラを移動していると2羽の雛の目玉がその動きを追って一緒に動いているのに気が付いて笑ってしまった。巣立ちして間もない雛なのにちゃんと視力があるらしい。

彼らはどんな思いで人間を見ているのだろうか?最も親鳥は人間を見慣れている筈だから、先祖代々恐怖感は感じないのかも知れない。そこは鎮守の森で直ぐ近くには和尚さんの家族も住んでいるので、暖かく見守られている環境ではある。これからも毎年訪れて欲しいものである。