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2013年7月17日水曜日

ミソサザイの営巣と巣立ち

学名:Troglodytes troglodytes
英名:(Winter)Wren

渓流などで見かける小鳥。チャッ、チャッと鳴きながら移動し、小さな丸みのある体にピンと立った尾羽がある。動きが早いのでなかなか背景と調和した写真を撮ることが難しい。一見地味な体色だが、明るい所で見ると、渋みのある玄人好みの羽の色をしている。一夫多妻の野鳥として知られるが、繁殖期に雄はコケ類を利用した複数の巣を作り、雌を誘う。新居を幾つか用意して、気に入った巣を雌に選ばせると言う粋な習性を持っているのだ。

話には聞いていたが、今回の場所にも、近くにもう1個の巣があった。そちらは日当たりの良い岩の斜面にあるが、残念なことに、実際に雛がいるのは、日の当たらない岩の側面の薄暗い所にある方の巣で、親鳥が頻繁に餌を運んでいた。やむおえずカメラのISO感度をヤケクソ設定の最高レベルにまで上げて撮影を続ける。

しばらくして、この分だと巣立ちが近いのでは、と思った次の日、親鳥は巣立ちをうながすかの様に餌を巣の中まで運ぶのをやめて、巣の外で雛を呼ぶ行動に転じた。巣の場所の直ぐ下側は滝壷から泡だって流れ出す急流であり、その流れは一旦トンネル状の大岩の基部へ吸い込まれて行くと言う難所で、もし雛がそこに落ちたら助からないだろうと思われたので、見ていても気が気ではなかった。

当初雛は巣から出て来たものの、怖がって飛び立つことが出来ず巣にしがみついていたが、再三の親鳥の呼び声に誘われて、けなげにも三羽の雛たちが次々に飛び去って行った。しばらくして、川岸の森に親鳥と雛の姿がチラリと見えたので何とか無事だったのかと胸をなでおろしつつ取材を終えた。

オオルリは幸せの青い鳥




学名:Cyanoptila cyanomelana
英名:Blue-and-white Flycatcher

札幌に住んでいた頃、イトヨの生息する渓流が市内にあって、潜った後川の畔で休んでいると、青葉、若葉に覆われ始めた高枝に止まり、きれいな声で囀っていた青い小鳥が目に入った。その出会いは印象的な光景として今でも脳裏に焼き付いている。

その後は、姿を見つけてもなかなか良い環境でじっくり観察したり撮ったりする機会が少なかったのだが、今年になって、石川県の野鳥公園で八重桜の枝にとまっている写真がマニアのブログに載っていたので、これは感動ものかも知れないと早速訪ねて見た。

案の定オオルリが園内に数羽飛来しており、これまでの努力は何だったのかと思える程接近出来るので、「今日はオオルリday♪♪」とばかり、スチールとビデオで迫った。

アストロアーツ刊「野鳥の撮影術」に「オオルリを美しい青色で撮るのは難しい」と書かれてある。私も沢山撮って見て判ったのだが、なるほどわずかな光線状態の変化で微妙に羽の色合いが違ってしまう。雄の腹部は純白なので白い部分はあくまでも白く、背中や主翼の青い部分はきれいな青い色にと言うバランスも大切なので、満足出来る感じに撮れたカットは僅かだった。(ついでながら、ビデオの最後に登場するのは雌で、地味な体色)ともあれオオルリは春と秋の渡りの季節になると全国の公園などでも見られるので、野鳥マニアの絶好の被写体であり、今後も皆が幸せな気持ちになりたくてウォッチングする人気の野鳥であることに変わりはないことだろう。

立山連峰のライチョウ


学名:Lagopus mutus
英名:Rock Ptarmigan

本州中部の山岳地帯にしか生息しない雷鳥は以前から会いたいと憧れていた鳥であった。ダイバーなので、高山に登る暇がなかったし、縁遠かったのだ。しかし、数年前から福井県に転居し、距離的には生息地に近づいたので、密かに情報を集めたりして準備をしていたが、幸いにも野鳥の好きな友人と意気投合し、去年(2012年)の秋に初めての立山登山の夢がかなった。

富山の立山駅まで車で行き、ケーブルカーに美女平迄乗車し、そこでバスに乗り換え室堂と言う登山者の出発点にもなっている地点迄座ったまま登る。前回はそこでこれから「登山か・・・」と溜息まじりの深呼吸などしたのだが、実はもうそれ以上の標高に行かなくてもその建物の玄関先でライチョウに会えるのには驚いた。

去年は秋口だったので、暑さを嫌うライチョウはハイマツの茂みに隠れる為、探し回ってやっと遠くにいたのを目撃出来た程度だった。しかし、今年は6月始めだったので、ベストシーズン。ライチョウは求愛の季節だし、若芽や若葉を求めて食欲も旺盛なので人間を怖がらず、雌雄が何処からでも現れ、望遠レンズ装備では近づき過ぎて困る程だった。

友人は携帯電話のカメラで撮影した画像をそのまま待ち受け画面にした程だ。野生の象徴と思っていた雷鳥は、まるで鶏の様に人慣れしていて、大勢の観光客の前でモデルよろしくすまし顔であった。おまけに、山小屋に1泊した次の日も上天気に恵まれたお陰で前から撮りたいと思っていたカットを午前中でほぼ撮り終えることが出来た。しかし午後になるとにわかに濃い霧が下界から湧き上がって来て、視界が悪くなり、やはり高山の自然はワイルドで、我々はただ幸運だっただけかも知れないと悟ったのであった。