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2012年12月27日木曜日

卵を守るオヤニラミ

英名:Japanese aucha perch
学名:Coreoperca kawamebari

オヤニラミは日本では珍しいスズキ科の純淡水魚である。体長は10〜12センチ。これと言った派手な体色ではないが、鰓蓋には特徴的な眼状斑がありヨツメとも呼ばれる。産卵期の雄は雌が水中の芦の茎等に産み付けた卵を守り、ふ化した仔魚の世話もする。

岐阜県の淡水魚仲間から、卵を睨んでいる雄がいるとの情報を聞いて出かけて見た。場所は木曽川の支流で、比較的自然度の高い河川だった。前回調査してから一度雨が降ってやや増水したとのことで、流されたのか既にふ化したのか、目的の場所では少しの卵しか残っていなかった。

しかし幸いにも直ぐ近くの竹やぶの畔りで新しい卵が発見出来た。増水で岸がえぐれたらしく、竹の根っこが水中に露出しており、川底まで伸びている。その竹の根に整然と産み付けられた真新しい卵があり雄も控えている。しかし頑張ってしばらくは卵の傍を離れなかったこの雄も、強力なビデオのライトを嫌ってか、間もなく逃走して隠れてしまい、そそのまま現れなかった。天も味方したのか、ちょうど雨足が激しくなって来て、水も濁り始めたので、帰り支度をすることになった。

ネコギギは夜行性

学名:Pseudobagrus ichikawai
英名:Stumpy bullhead

ネコギギは1977年国の天然記念物に指定されているギギ科の魚であり、三河湾及び伊勢湾に流入する河川にのみ分布している。ネコギギは夜行性で昼間は岩の間などに隠れていて撮影出来ないと言うので、以前撮影した時には夕方暗くなるのを待って撮影したものだった。しかし今回は曇りがちの天気だったとは言え、日中だったので、水中で出会えるとは思ってもいなかった。

仲間の一人が「ギギがいますよ」と叫んだので私は「何だギギか」と見ようともしなかったのだが、「ネコです。ネコギギですよ」と再度声をかけられ、水中マスク越しに覗いて見ると、何年ぶりかで見るネコギギが岩の下から顔を出しているではないか。それも大小2匹。雌雄であるかは定かではないが、時々全身をあらわして泳いだりもしていた。正面から見ると可愛い顔に猫の様にヒゲが生えているのでこの和名なのだと納得出来る。画面の端に登場しているヌマチチブと比較すると判る様にこの仲間では小型種である。

清流にしか棲めない魚なので近年生息域が狭められているとのこだが、何時までもこの生まれた川で命脈を保ってくれることを祈った。



川を渡るホンドタヌキ

英名:Raccoon dog
学名:Nyctereutes procyonoides


最近時々石川県の森林公園へ出かける。海岸と大きな河に面した広大な森の中央には清涼な水が流れる小川があって、小鳥たちが水浴びに来る姿を観察出来る。

所定の場所に三脚を据えて待っていると、キビタキ、ヤマガラ、シジュウカラ、オオルリなどが次々に出没して水を飲んだり、水浴びをする。そうしたときふと流れの奥を見ると、大きな動物が現れて水を飲んでいる気配だ。最初は石の陰で良く見えなかったので、アライグマかと思ってビデオを回し始めたが、「ヌッ」とあげた顔は紛れもない狸(ホンドタヌキ)だった。

大きさはこれまで私が遭遇した中では最大級。夜間には何度か遭遇しているが、明るい場所で出会うことは少ないので、そのまま撮り続ける。どうやら右の前足を痛めているらしく歩き方が不自然である。動物園の生き物の様に獣医さんに診て貰えない野生の動物にとって、歩行が出来なくなることは即、死を意味する。イガグリの棘を刺した位なら良いのだが、骨折とかだったらどうなってしまうのだろう。そんな心配をしている私の方を見ても特に慌てる様子もなくゆっくりと川を渡って去って行った。

そう言えば北海道にいた頃、渓流の撮影からの帰り道、林道の中央でにわか雨をシャワー変わりにして体を洗っていた笑えるタヌキがいたのをふと思い出した。あのタヌキは今頃どうしているだろうか?