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2012年5月31日木曜日

ギフチョウとカタクリ

英名:Japanese Luehdorfia
学名:Luehdorfia japonica

ギフチョウはアゲハチョウの仲間で、日本固有種。本州の山間部に生息し、アゲハよりは一回り小さいが、より美しい蝶で、里山の雪解けが終わる頃、カタクリの花が咲く日当たりの良い斜面の下草の少ない広葉樹林周辺で見られる様になる。

ギフチョウは秋田県から山口県にかけての本州に広く分布しているらしいが、最初に採集されたのが岐阜県の郡上附近なので、この名があるとか。ギフチョウはカタクリの蜜を好むので、カタクリが群生している場所で見られることが多い。両者は色彩的にも調和していて見る者をなごませる。

又、卵は濃緑色のカンアオイの葉に産み付けられ、幼虫(黒いケムシ)はその葉を食べて育つとのこと。ケムシは苦手な私なので、最初地元のカメラ愛好家に誘われた時も、「まろは昆虫は苦手じゃ」とばかりそれ程乗り気ではなかったのだが、ギフチョウは天国からやってきた神の遣いかと思われる程の可憐さですっかり一目ぼれしてしまった。

越前の里山に暮らす様になって、我家からわずか5分〜10分程の距離にその生息ポイントがあるのにも感動した。撮影は簡単そうに思えたのだが、カタクリの花から花へひらひらと舞う行動のパターンがなかなか読めず最初はシャッターを押したとたんに飛ばれてしまうことが多かったが、「ちょうちょう」の童謡を口ずさみながら、何度も異常接近を繰り返す内に少しずつ、その行動が予測出来る様になって、何とかご覧の様なビデオを撮ることが出来た。

ベニザケ婚姻色の群

学名:Salmo(Oncorhynchus)nerka neruka
英名:Sockeye salmon

ベニザケとヒメマスは同じ種類の魚です。陸封されたヒメマスの卵からふ化した幼魚を海に続く河川に放流するとやがて降海し、ベニザケに成長して再び放流された河川に回帰します。

さけますセンターでは河口近くで採取した銀白色のベニザケ(元はヒメマス卵)を養殖池で蓄養し、成熟するまで待って、採卵しています。ごく一部の河川では、秋に婚姻色の群が見られる様になりましたが、まだ数ケ所です。

ビデオは湧水を利用した池で蓄養されていた採卵真近かな婚姻色の群。雄は猛禽類の様に鼻が曲がり、背っぱりの姿になります。アラスカやカナダでは自然の状態でこうした群が見られますが、我国ではベニザケの自然遡上が見られる河川は北方領土である千島列島・択捉島の得茂別(ウルモベツ)湖以外にはないので、北海道の一部の河川でベニザケを定着させる試みが続けられています。

ベニザケの魚体はシロザケに比べて小ぶりである為肉量はやや少ないものの、紅い身肉で見た目も美しく、他のサケ類に比べて美味なので食用として人気があります。又、ギンザケやニジマスの様に養殖物が出回ることはなく、海の自然な餌で成長した魚なので、より安心して食べることが出来ます。

何時の日か、北海道の河川でも、この真紅の姿が大挙して遡上する姿が見られる様になるかも知れません。又1日も早く不法に占拠されている北方領土を返還して欲しいと願うばかりです。

取材協力:さけますセンター千歳事業所

ヤマセミの巣穴掘り

学名:Ceryle lugubris
英名:Greater Pied Kingfisher

30年程前、取材の帰りに中国地方の山間部を小雪の降る晩秋に山越えする時、遠くのつり橋のロープにとまっていたのを目撃したのが、私がヤマセミを見た最初だったと記憶している。

北海道から九州にかけて繁殖する留鳥のヤマセミは魚類を主食として生活している関係上、山上湖や山間部の渓流に住み、余り都市化が進んだ場所では普通見られない。

札幌に移住してから、なんと市内の山沿いの小川にもヤマセミを発見し、天気の良い日には毎日の様にそこへ出かけてブラインドを張って観察と撮影をしていた。じっと隠れていると幻の野鳥が直ぐ目の前の小枝にとまり、エゾウグイやスナヤツメを捕食したり、水浴びをしたり、枝の上で食後のうたた寝をしたりするので感激だった。

色彩的には白黒の斑で地味な鳥だが、くちばしが長大で、大きな冠羽があり、雄の胸部は薄いオレンジ色、雌は翼の裏がオレンジ色をおびている。営巣する場所は垂直に切り立った崖で天敵が巣穴に入れない様な位置に奥行が1メートルもある横穴を掘り巣穴とする。

穴堀りはそれ程得意ではないので、3週間もかかる場合が多いが、前の年に使った古巣をお掃除して再利用することも多い。巣穴へ飛び込む場合はやや離れた樹木などから一気に飛び込む場合も多いが、近くにとまりやすい枝や岩等があれば、一旦そこにとまってから侵入することもある。

キャラ、キャラツと独特な声で鳴く。留鳥なので、冬場は雪に閉ざされた様な細い渓流ではなく、餌の捕れる本流の岸辺にある樹木の枝にとまっているのを見かけることが多い。




2012年5月2日水曜日

メジロと山桜

学名:Zosterops japonicus
英名:Japanese White-eye

目の周囲に白いアイリングが目立つ黄緑色のメジロは姿が可愛らしくチーチーと澄んだ声で鳴く。全国に生息する留鳥であり、野鳥図鑑の表紙等にも登場する人気者である。加えて春になり満開の桜の花の蜜を吸いにメジロが集まってくる情景は純日本的で見る者をなごませる。

何度かこのカットを撮影したいと挑戦したが、通常桜の枝はある程度の高さがあり、撮影する場合、どうしてもかなり離れた位置から撮影せざるをえない。しかも下から見上げるので、その時の光線状態にもよるが、逆光になってしまうことが少なくない。まして、染井吉野等が満開の時期には、白い桜花にウグイス色の被写体なので、露出の加減が難しい。メジロに露出を合わせると、露出オーバーでせっかくの桜花が白くとんでしまう。

この日私はダイビングをする予定で東伊豆のリゾートの一室で目覚めた。上天気で朝日が2階の部屋を明るく照らし始めたのでカーテンの隙間から表を見ると、窓と同じ高さに満開の伊豆山桜が咲いていて、何とメジロが何羽か集まって来ていた。私は前夜、水中撮影用のハウジングにビデオ・カメラをセットしてから寝たのだが、それを又取り出して、窓から4〜5メートルの距離でこのカットを撮ることが出来た。

私の場合、小鳥をビデオで撮影する場合テレコンバーターを取り付け900mm相当位で撮るケースが多いが、その日はダイビング目的だったので、愛用のレイノックス・テレコンは持参していなかったし、十分近いのでその必要がなかった。そして以前、伊豆大島の民宿でも庭の椿の花にメジロが来ていたことをふと思い出した。

UFOみたいなエチゼンクラゲ

学名:Nemopilema nomurai
英名:Nomura’s jellyfish

巨大なエチゼンクラゲの話題は何度も聞いてはいたが、以前は東京や札幌に住んでいたので、クラゲが大挙して襲来する秋に、日本海に潜る機会がなく遭遇出来ないでいた。

越前市に転居してから海の荒れる真冬の3ケ月以外は何時でも潜れる状況だったので、その内と思っていた矢先、一昨年の秋、案の定大襲来が起こった。何時も通っていた南越前のダイビング・センターに潜った所、何と湾内全部がクラゲで埋まってしまう程集まっていた。

微細なポリプが海中に浮いているので頬に刺さりチクチクと痛む。薄い肌色をしているのが多いが、ピンク色がかった個体もいる。笠の直径は1メートル以上もあり、重さは200kgを超えるものもあるとか聞いてはいたが、いざそのクラゲの中に飛び込んでしまうと、毒のある口腕と紐状の付属器に触れない様にするのが精一杯で、クラゲの間を縫う様に沖に向かった。

沖の浅根の上で撮影を始めたがクラゲは波の動きに合わせて、ごろごろと転がってしまうので、さらに水深のある沖まで移動してやっと自然な感じで撮影出来た。日本海では定置網に入って他の魚を売り物にならない程傷つけたりするやっかいもので、漁師はバラバラに切りきざんで、海に捨てている。

風向きが沖に向かっているときは良いが一旦岸へ向かって吹くと、その残骸共々沿岸に打ち上げられてクラゲの墓場みたいになる。中国では食材に利用することもあるらしいので、捨てるのはもったいない。我国でも何とか有効利用を考えて欲しいものである。